1.迫りくる突然の求愛

5/16
前へ
/313ページ
次へ
 有無を言わさず私の横に座る。そして、そのまま前を向いた状態で、 「彼氏。できたでしょ?」  何が言いたいんだろう。  私の交遊に興味があるとは思えないのだけれど。 「雰囲気が柔らかくなったね。ビックリした」  私に対する前向きな評価を面と向かって言われるとは思ってもみず、私の方がビックリだ。  何も言わない私の方へ、笹木さんは漸く顔を向けた。 「尾張(高校)のちっちゃい幼馴染み?」  よく覚えてるなぁ、私なんかの人間関係。と、また驚く。  この辺りでは他と一線を画す超エリートな中高一貫校だったのが記憶に残りやすかったのかもしれない。  そう、納得し始めた時。 「沖永さん、もうオバケは見ないの?」  一瞬で顔の筋肉が強張ったのが、自分でも判った。  笹木さんの表情に茶化すような気配はなく、どこまでも真剣だった。  そして、疑問系な話し方だけれど、純粋に私への質問という訳ではない確信を感じる。彼女は何らかの情報を既に握っているのだ。  つまり、今私にしたいのは確認だろう。  一体どうして?  わざわざ私を追いかけて話題にするくらいだ、単なる暇潰しではないだろう。  もしかしたら、笹木さんも見えるのかもしれない。  でも、どこからそんな話題を?  何で今突然、そんなことを……
/313ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加