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私は、この学園に入ってからその手の話題を出したことなどない。素振りも見せていない。
もしかして、小学校の同級生が、笹木さんのクラスにいるんだろうか。
大きく動揺しながら、私はつい視線を笹木さんから外す。そして、いつもそこに立っている、私の目的の人物を視界に入れた。
今も、儚げな、見ると切なくなる笑顔を貼り付けている屋上のこの人。
ずっと、私だけが知る存在だと思っていた人。
「見ないよ」
私はいつも通りの表情を意識しつつ、いつになく冷淡に言い放ってしまった。
笹木さんの顔を見ることはできない。
「いつから見なくなったの?」
驚く様子を欠片も見せず、食い下がる笹木さん。一体、何をどこまで知っているんだろう。
いや、鎌掛けかもしれない。
しかし、事実はどうあがいても1つだ。
物心ついたときには既に、私の世界にはオバケがいた。
そして、今でも。
ただ、落ち着いてさえいれば、見えない。見えたとしても、すぐ目をそらせばそれで終わる。
しかし一度パニクると状況は転げ落ちるようにどんどん悪化してしまう。些細な悪戯程度から激しい暴行まで、オバケ達は様々にちょっかいをかけてきて私を翻弄し楽しむのだ。
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