4.強度の変態は、ちょっと。

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 しかし動揺したのは私達部外者ばかり。言った本人は呑気だし言われた本人は何処吹く風だ。 「素晴らしいことです。他でもないお母さまからの評価だということがまた素晴らしいですね。 私自身、生涯に一度きりである生徒の高校生活を、教師としてバックアップできることはこの上ない喜びであり、それは若菜さんに対しても同じ気持ちです。 まだ教師として未熟ではありますが、精一杯務めますので、三年間、どうぞ宜しくお願い致します」  長々と続いた台詞が冗長に感じないのは、白河先生専売のクーリッシュな爽やかさ故だろうか。 『清濁自由に使い分ける奴の無敵さって忌々しさ半端無いわ』  私の体を後ろから、二の腕辺りを両腕で抱き締め、顎を私の右肩に乗せながら、屋上の彼が毒を吐く。  顔の筋肉が引きつっている真咲と優美もどうやら同意見のようだけれど、さすがに私の母の手前、口にするのは控えている。  まぁこちらこそ、おほほほとか何とか。母が世にも適当な合いの手を入れながら、 部屋を出ていく先生を追い、 「あ。ジャムとクリーム持ってくるから、リッツはまだ食べちゃダメよ」 と、どうやら私たちに叫ぶ。  ダメってことないでしょ。このままでも美味しいよ? 「あっ、先生、頭は大丈夫ですか?」  遠くなっていく母の声。如何にも付け足しな安否確認も、その一歩間違えば相手を不愉快にさせる言語選択も、さすがの母クオリティーだった。
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