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皇樹事変の結末は、人類の勝利に終わったらしい。しかし、それを語るクロードの表情は、どこか寂しそうであった。
なお、皇樹は皇獣達の住処のような物であったらしいが、休眠状態である限りは無害との事だ。休火山のような物なのだろう。次に目覚めるのがいつなのかは分からないが、それまでは安全であるようだ。打ち込まれた鎮静剤がいつまで効力を発揮できるものなのか、気になる所ではあるが……
「おーじゅうは?」
「皇獣も弱点が発見されてね。最近では専門家が始末してくれるんだ」
「げむれんー?」
「ゲム戦、ね」
首をかしげながら問うスミの頭を撫でながら、彼は手近な椅子に腰かけた。それに倣い、スミも隣の椅子に飛び乗ってみる。木製のそれはゴツゴツしていたが、決して座り心地は悪くない。
「正確には、対皇獣地方治安維持軍ゲムリア戦術機動隊。通称、ゲムリア戦隊、略してゲム戦と呼ばれる事が多いね。この街、ゲムリアの治安維持の為の自警軍隊と思ってくれればいいよ」
「げむ……りあ。げむせん!」
「うん、よく言えたね」
再び頭を撫でられ、スミはくすぐったそうに目を細めた。
この街は、ゲムリアという名であるらしい。その名前にも、やはり覚えが――いや、これは覚えている。正確には、いま思い出した、だ。気が付けば、視界の端の表示は【同調率...1.04%】。この数字が伸びる度に、少しずつ何かを思い出している気がした。
たとえば、ゲムリアについて。
数年前に経済・技術特区として新設されたこの地方は、日本領内にありながらも日本から独立した都市として自治権が認められ、一時大きく世間を騒がせた。このゲムリアには世界中の大手企業が集められ、最先端技術の開発や試験運用が積極的に行われたという。日本国憲法に縛られない独自の制度・法令も適用されたりなど、色々と特異な地区であったらしい。
その代表的なものが、ゲム戦だ。治安維持や救護活動にのみ運用が許可されているのは日本の自衛隊と同様だが、同時に限定された地域内においてなら、対皇獣でなくとも治安維持の為ならば武力行使が認められており、他地域の対皇獣治安維持部隊とはかなり性格が異なる。他にもゲムリアには特異な規制や認可、義務や権利などがいくつも存在しているのだ、とクロードは説明を付け足した。
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