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さて、今朝の食事はといえば、 食べ合わせはあまり良くないのだろうが、スミ的には文句なしの仕上がりであった。
実際に食べてみて思ったのだが、スミは魚料理が好物であるらしい。ふわふわのご飯や、湯葉と三つ葉のすまし汁は美味しかったし、たっぷりとマヨネーズを和えたコールスローも瑞々しくて、確かにとても満足のいく出来映えだと言える。
が、味噌煮にされた鯖を口にしたときの感動は、他を食べた時の比ではなかった。箸を入れるとトロリと身がほどけ、味噌だれとよく絡む。柔らかくなるまで煮込まれた鯖と、煮詰める事でコクが深くなる味噌の相性は抜群で、脂の乗った部位と味噌ダレを一緒に食べた時の味わいは格別だ。双方の良い点が相乗効果で更に食欲を刺激し、スミの箸は一向に止まりそうにない。
記憶が吹き飛んでいるにも関わらず、彼女はこれが自分の好物だったのだと確信した。素材が良いのか、クロードの調理法が良いのか、あるいはその両方か。ともあれ、これはとんでもない大発見である。
【登録:好物】
【鯖の味噌煮】
【同調率...1.08%】
視界の端に無粋な文字が飛び出し、それと同時に同調率表示の値も伸びたが、立ち並ぶ朝食を殲滅するのに忙しい彼女にとってはどうでもいい事であった。
「ほら、そんなに慌てなくても、朝ご飯は逃げないよ」
「あったかいごはんは、にげ……くふっ、けほっ!」
「ほら、落ち着いて。ごはんはよく噛んで」
物凄い勢いで食事を掻き込みながら返事をしようとしたスミは、案の定、喉を詰まらせて咳き込んだ。それもまた、クロードは予測済みだったのだろう。そつのない滑らかな動きで水の入ったグラスを渡してやると、スミは一気に飲み干した。
「うあー……」
「食べながら喋らないの。落ち着いてご飯が食べられたら、最後にデザートもあげるから」
「デザート!」
スミの反応を見て、クロードは失言だったかな、と苦笑した。スミは甘い物も大好物なのだ。やれやれと肩をすくめると、彼は空になったグラスに水を汲みに席を立1つ。
彼が水を汲んだグラスと市販のプチゼリーを持って戻ってきた時には、案の定、デザートが目的のスミは急いで朝食を詰め込み過ぎて、再び喉を詰まらせ咳き込んでいた。
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