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黙り込む陽菜子に周防は悔しげな顔で言った。
「貴女を子供扱いにしたから、嫌われていたわけですね。
そしてあの男が良いと……婚約者の為に貞操も守れないほど、あの男が良いということですか」
「え……?あ……ちがっ」
やつあたりした自分が吐いた嘘の言葉を、周防が陽菜子の本心だと勘違いしている。
それにやっと気づいた陽菜子は焦った。
違う……私はホントは子供で。あれは嘘だったのだと、そう言う前にーーー周防は氷のような瞳を更に冷たくして、陽菜子を見下げるように嘲笑った。
「ならば……陽菜子お嬢様。大人の女であるというのを見せて頂きましょう」
氷の瞳の奥に見えるのは、揺らめく焔。
それは、まるで青白い蜃気楼だ。
「どうやって、男を垂らしこんだのか、はしたないお嬢様の姿を見せてもらいましょう」
「え……?」
周防の静かな声に怒りが含まれていたのだが、陽菜子は気づいていなかった。
周防の部屋に連れていかれた陽菜子。
小さな楕円テーブルと対局に置かれていた椅子の一つに、周防が座る。
陽菜子に向かいに座れと、促した周防に従って、陽菜子は椅子の前に立ったのだが……
「さぁ、私を誘惑してごらんなさい」
「え?」
驚く陽菜子に周防は
「お嬢様はあの男を……男をたぶらかしのでしょう?
どうやって、たぶらかしたのか……男に肌を見せるのも厭わない。
もう処女ではないお嬢様なら、簡単ですよね」
陽菜子を煽るように言った。
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