氷解

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「少しは懐いてくれるようになりましたよ」 フッと柔らかい声で言う周防。 『少しか……。じゃあ、貴文くんと陽菜子の婚約はまだまだだな』 と言うパパの声に、私はパチリと目を開けた。 ーーー婚約? え? どういう事? ガバっと身体を起こして、私は周防を見る。 シっと指をたてる周防は私の寝ていたベットに腰掛けていた。 いつものように眼鏡を掛けている周防の瞳ーー冷たい氷のような瞳で。 また、いつもの周防だーーーっ、と怯えると、周防は人差し指でそっと私の頬を撫でた。 そして電話の相手ーーー父に、周防は静かな声で言う。 「さぁ……どうでしょうか? 私と陽菜子お嬢様の婚約は、意外に早いかもしれませんよ」 『え? どういう事だ……まさか……』 「今、取り込み中なので、また追ってご連絡を致します」 と言って、周防はスマホの通話を強制終了させると、スマホを床に投げた。 「す、周防……? どういうこと?」 「お嬢様はまだ、お綺麗な身体でございます」 「え?」 周防の氷のような冷たい瞳は、もう氷ではなかった。 熱い炎で私を見つめる周防は 「御婚約する方には、身体を許してもよいと私は言いました。まだ婚約もなさっていないお嬢様はまだ処女でございます」 「え……あ、私」 「指だけで、気を失いましからね」 周防にそう言われて、真っ赤な顔で俯く私に、 「私にこのまま……身体を許されますか? 身体を許せば、私はお嬢様の婚約者になります。 それでもいいのですか?」 と、周防が私の左手の甲に接吻(くちづけ)た。
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