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陽菜子の潤んだ瞳は周防を見つめる。
「……周防が、私の婚約者なんでしょ?」
「お嬢様が私を求めてくれるならば。私はお嬢様の婚約者になりたいと、そう思いながらずっとお側で…お使えしていました」
この邸に来て、私を見た周防は、私と婚約したいと、自ら父に申し出ていたのだーーーそう言った周防の顔は少しだけ、赤く染まっていた。
「でも……雅美は?」
「雅美に誘われた時、私はお嬢様への欲望を発散させようと、不埒な事を思ったのは事実です」
周防は自らを最低な男なんですと、蔑み、悲し気な瞳を私に向けた。
「穢れのないお嬢様が愛しくて。でも私は簡単に手を出してはいけないーーーそう、思ったのに、頭の中はお嬢様を犯していたんです」
このままでは、自分の欲望で、私を穢して、壊してしまうかもしれないと、それを恐れていたとーーー言った周防。
「雅美とは何もありません。私はお嬢様だけを愛しています」
また、私の左手の甲に接吻(くちづけ)をした。
私は周防に愛されていたのだと初めて知り、ならば、周防に愛されて、壊されてもいい。
私も周防を愛してるーーーそう思った私は
「婚約者なら……最後までシテ」
と、周防にしがみつくように、抱きついた。
周防はゆっくりと眼鏡を外しーーー
「なら、こんな下衆な男である俺の欲深い愛情。それを覚悟して受け止められますか?」
と、周防が問うから、私は頷いて周防にーーー「愛しています」と告げた。
「俺も愛している」と、言った周防。
ベットに私を押し倒した周防の瞳は、冷たい瞳ではなかった。
情欲に燃え盛る熱い、男の目をしていた。
周防の氷のような瞳はーーー氷解する。
冷静な執事を装いながら、周防は私を縛り付けていた。
自分の中にある激しい感情を隠しながら私を氷の檻に閉じ込めた周防は、冷たい瞳で、私を見つめながら愛でていたのだ。
今宵、周防は氷を自ら解かした。
その証拠に、ほら……
「ほら、何度でもイケ」
「んはぁぁぁぁ!」
私は周防の愛に、はしたなく喘いだ。
眼鏡を外した周防はーーー氷解して、熱く燃えたぎる情欲の焔を放ちながら、私を狂わしていく。
氷解した周防に、私の身体は濡らされていく。
少女から大人へ、
可憐な花から、妖艶な華に変わり、周防に愛されて、私は咲き乱れていったのだった。
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