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ーーーー土曜日の昼下がり、陽菜子は窓辺から邸の庭園を見ていた。
整備の行き届いたイングリッシュガーデンは周防が手入れをしている。
窓辺の下にいる周防は今日も、庭師に色々と指示していて。
そんな周防の姿を、陽菜子は目で追っていたのだが、雅美がやってきたことに気づく。
周防に話しかける雅美を、陽菜子は眉をしかめて見つめていた。
眼鏡を掛けた周防は無表情だったが、
雅美が背伸びをして、周防の眼鏡をとると驚いた顔をした。
そしてそのまま背伸びをした雅美は周防の唇に近づき、キスをした。
その光景を見た陽菜子は
「ーーーっ!」
声が出なかった。
周防にキスをした雅美は、周防の手を掴んで自分の胸に導いた。
すると、周防は口角をニヤリと上げて、自分の顔を傾ける。
そのまま、雅美の顔に近づき……
ーーーその様を一部始終見ていた陽菜子は……
「やっ!」
耳を塞いで、目を閉じて、窓辺を背にして座り込んだ。
見たくなかった!
周防は……周防は……いつも氷のような瞳をしてるのに!
雅美を見る、あの瞳。
熱い瞳をして
あんな、男の目をした周防なんてーーー私は知らないっ!
見たことのない周防の男の姿。
雅美にキスをしようとした姿を見た陽菜子は、あまりの衝撃に胸の奥が苦しくなった。
苦しさのあまり、陽菜子の瞳には自然に涙が溢れて。
そしてーーーガタンッと音がして、テーブルからスマホが落ちた。
陽菜子はビクっと震えた。
マナーモードにしていたので、着信でスマホが震えて、その振動により、テーブルから落ちたのだろう。
着信は聡からだった。
カラオケいつにする?って……聡のメールを見て、陽菜子はどうしようと思った。
でも、周防は、明日は休み。
雅美も休みだったーーーって、そう思ったら、陽菜子は聡に
「明日、会いましょう」
そう返事していた。
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