417人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーー翌日、周防が家を出たのを確認して、陽菜子も家を出る。
聡とランチをして、カラオケに向かった。
陽菜子と聡は、さっきまでたわいのない雑談していたのに、カラオケの個室に入ると、聡が急に無言になる。
その空気に、陽菜子は気まずくなるが、
「その服……可愛いね」
聡が陽菜子を褒めながら、自分の身体を陽菜子の身体に近づけていった。
陽菜子のワンピース。
襟元から裾まで、全面にボタンがある服で。
周防が「このワンピースは、私といる時にしか着てはいけません」と、言って、クローゼットの奥に入れたモノだった。
陽菜子がわざわざこのワンピースを出して着たのも、周防に当てつけのようなものだった。
そのワンピースのボタンに聡の指が触れる。
「え?……あ、いや……」
プチン、プチンとボタンが上から外されて
「いやぁっ!」
と、身を翻したけど、聡が
「陽菜子ちゃん……好きなんだ」
と、陽菜子の唇に強引にキスをした。
周防も………雅美さんとキスをしていた。
ーーーそう思った途端に涙が溢れて、陽菜子は聡の「付き合ってほしい」という言葉を受け入れた。
私は聡さんと、付き合う。
ーーーーだって、ランチをした時、楽しかったんだもの。
私が欲しかったのは彼氏。
ーーー周防は、私のことに興味がないはず。
雅美といたのだから……
念願だった彼氏が出来るというのにーーーーどうして、私は虚しいんだろう?
トントンーーードアの叩く音。
「なんだよっ、タイミングの悪い店員だな」
聡が忌々しい顔をして、陽菜子から離れてドアに近づく。
ガチャッとドアを開けたのは、聡でもなく、カラオケの店員でもなかった。
立っていたのはーーー
「お嬢様、何をなさってるのですか? 帰りますよ」
冷たい氷のような瞳をした周防だった。
「なっ…….なんで、周防が……」
動揺する陽菜子に近づく周防。陽菜子の腕を掴んで、引き寄せた。
「貞操をお守りくださいと、私は申し上げましたよね?」
ボタンを開けられた陽菜子の胸元を見て、低い声で言う。
「あ……」
陽菜子は真っ赤な顔で俯きながら、はだけた胸元を隠す。
そんな陽菜子を冷たい氷のような瞳で見つめながら、
「帰りますよ」ーーーーと、低い声を放った。
最初のコメントを投稿しよう!