氷解

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ーーー翌日、周防が家を出たのを確認して、陽菜子も家を出る。 聡とランチをして、カラオケに向かった。 陽菜子と聡は、さっきまでたわいのない雑談していたのに、カラオケの個室に入ると、聡が急に無言になる。 その空気に、陽菜子は気まずくなるが、 「その服……可愛いね」 聡が陽菜子を褒めながら、自分の身体を陽菜子の身体に近づけていった。 陽菜子のワンピース。 襟元から裾まで、全面にボタンがある服で。 周防が「このワンピースは、私といる時にしか着てはいけません」と、言って、クローゼットの奥に入れたモノだった。 陽菜子がわざわざこのワンピースを出して着たのも、周防に当てつけのようなものだった。 そのワンピースのボタンに聡の指が触れる。 「え?……あ、いや……」 プチン、プチンとボタンが上から外されて 「いやぁっ!」 と、身を翻したけど、聡が 「陽菜子ちゃん……好きなんだ」 と、陽菜子の唇に強引にキスをした。 周防も………雅美さんとキスをしていた。 ーーーそう思った途端に涙が溢れて、陽菜子は聡の「付き合ってほしい」という言葉を受け入れた。 私は聡さんと、付き合う。 ーーーーだって、ランチをした時、楽しかったんだもの。 私が欲しかったのは彼氏。 ーーー周防は、私のことに興味がないはず。 雅美といたのだから…… 念願だった彼氏が出来るというのにーーーーどうして、私は虚しいんだろう? トントンーーードアの叩く音。 「なんだよっ、タイミングの悪い店員だな」 聡が忌々しい顔をして、陽菜子から離れてドアに近づく。 ガチャッとドアを開けたのは、聡でもなく、カラオケの店員でもなかった。 立っていたのはーーー 「お嬢様、何をなさってるのですか? 帰りますよ」 冷たい氷のような瞳をした周防だった。 「なっ…….なんで、周防が……」 動揺する陽菜子に近づく周防。陽菜子の腕を掴んで、引き寄せた。 「貞操をお守りくださいと、私は申し上げましたよね?」 ボタンを開けられた陽菜子の胸元を見て、低い声で言う。 「あ……」 陽菜子は真っ赤な顔で俯きながら、はだけた胸元を隠す。 そんな陽菜子を冷たい氷のような瞳で見つめながら、 「帰りますよ」ーーーーと、低い声を放った。
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