氷解

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ーーー陽菜子は周防に無理矢理にカラオケルームから連れ出されて、邸に戻った。 「前から、何度も貞操をお守りくださいと申し上げましたよね? どうして、あんな場所にあんな男と二人で……それも、その服を着て会っていたのですか?」 周防の眼鏡のレンズが、冷たい氷のように見えて、陽菜子は黙り込んだ。 黙り込む陽菜子に周防はしびれを切らしたのだろう。 「陽菜子お嬢様は、清らかで貞淑なまま。穢れのないお嬢様でいて欲しいと私が願っているのも、ご存知ですよね?」 周防が子供を諭すように言う。 それに苛立ちを覚えた陽菜子はーーー 「私は清らかでいたいなんて、思ってないわ!押し付けないで!」 「何を仰る……」 「婚約者なんか、どうでもいいの! 私は私で結婚相手を見つけるから!」 吐き捨てるように言うと、周防がため息をついた。 「お嬢様は誰に何を言われたんですか? それともあの男に……? あの男が何かを言ったとしても、それはお嬢様をたぶらかす為、騙そうとしているんですよ」 周防は聡を一方的に悪いと決めつるように言えば、陽菜子が反論する。 「違うわっ! 私は、私の意思で……決めてるから、聡さんは関係ないっ!」 「聡……あの男が、お嬢様に何を吹き込んだか知りませんが、お嬢様はまだ子供なんです。もう、あの男と会ってはいけません」 周防は陽菜子に冷たい氷のような瞳を向ける。 その目に威圧されそうになったけど、陽菜子は力を振り絞るようにして周防に言った。 「私は子供じゃない! そ、それに………私から、そう!私からあの人を誘ったのよ!」 「…誘った?」 目を見開く周防。 「ええ、そうよ!誘ったのよ! そ、それに私は処女じゃないし、男を誘う術も知っているからっ!」 処女じゃないと、男を誘える。もう大人の女なのだと、でまかせを言ったしまった陽菜子。 自分が嘘をついてるせいで、声が上擦っていた。 そんな陽菜子を見つめていた周防は 「また、何を言い出したのかと思ったら……お嬢様が、そのような事をするはずがありません」 クッと喉を鳴らして、含み笑いを堪えて 「私が言い過ぎました。 意地を張って、そんな見え透いた嘘をつくものではありませんよ」 と、陽菜子の嘘を見抜く。
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