氷解

9/21
前へ
/24ページ
次へ
嘘を見抜かれたとわかっても、陽菜子は周防に意地を張った。 「嘘じゃないわっ! 私が聡さんを誘ったのよっ! 私は周防のせいで自由がなかったの! それが嫌だった!」 「お嬢様……」 「周防は私に自由を与えない。なのに周防は……」 雅美と周防の姿を思い浮かべだった陽菜子は 「私はダメって……いかがわしい事をしている周防に命令されたくないっ!」 「はっ? いかがわしいって…私が……ですか?」 「周防と雅美が外で会ってる事も知ってるわ! キスだって、してた! 私には眼鏡姿で真面目な格好で……でも、周防は眼鏡を外して別人みたいな格好で……雅美とキスしていた!私だって、周防みたいに、違う格好で……男を誘惑出来るわ」 周防にやつあたりも同然に叫んでいた。 周防が私を子供として、見る。 なのに、周防は雅美のことは大人の女として見ている。 陽菜子にとって、それが嫌だったのだ。 本当は雅美に嫉妬していた陽菜子。 あんな、熱い瞳で雅美を見る周防にも腹がたっていた。 「周防なんて、嫌い!」 なんて、嘘。 ホントは好きなんだって気づいてる。 だけど、陽菜子の口から出るのは……嫌いと言う言葉。 周防は顔を歪めて 「私の事をお嫌いですか……」 切なげに陽菜子を見た。 だけど、意地を張り続ける陽菜子は 「嫌い……」 と、また、周防を嫌いだと言ってしまった。 「そうですか。では、あの男の方が良いのですね」 「………」 意地を張りすぎて、陽菜子は違うって、もう言えなくてーーーー黙り込んでしまう。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

417人が本棚に入れています
本棚に追加