NAGOMU SIDE

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俺は冴子にいわれるまま、すでにクローズしている会場に足を踏み入れた。 板張りのフロアに俺の足音だけが響く。 俺の足音以外何も聞こえない。 一つ一つの作品にゆっくりと目をやる。 それらに込められた思いを丁寧に感じ取っていく。 まるでこの三年半を埋めていくかのように… やがてメインの作品にたどり着く。 その作品の前に佇む後ろ姿に思わず口角が上がる。 髪、切りやがったな。 とっくに俺の存在に気づいている癖に一向に振り向かない後ろ姿をそのまま抱きしめ 俺の腕の中に会えなかった三年半の思いと一緒に閉じ込めた。 「ったく、帰って来るのが遅ぇんだよ。言ったろ? 俺は待たされるのは嫌いだって。」
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