COCONE SIDE

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冴子さんの後押しもあって早速、私は個展用の家具作りを始めた。 まだまだ冴子さんの事務所の仕事もやりながらだから、作業は中々進まないけどそれでも少しずつでも形にしていった。 それと、メインにする作品を私は最初から決めていた。 私が帰る場所に捧げよう…。 あの人の為に…。 ただ、私は個展を開く事も帰国することも師匠にまだ話していなかった。 もし、師匠が私の事を待っていてくれなかったら… とか 私の帰る場所がもうなかったらどうしよう… あの時、空港で帰る場所はここだろって師匠は言ってくれたけど、その気持ちが今も変わっていないなんて保証はない。 そんな事を考えると怖くてついつい連絡するのを先伸ばしにしていた。 結局、体調を崩したりして納期がギリギリになって連絡するどころじゃなくなった訳だけど。 尚更、連絡するタイミングをなくしてしまったのだ。 そして、今日、ついに日本での個展が開催される。 結局、今日まで一度も師匠とは連絡をとらなかった。 ただ昼夜問わず個展の準備に終われながらも冴子さんに、師匠にここに来て欲しいとだけ伝えてもらえるようお願いしておいた。 来てもらえるだろうか? 何にも言わなかったくせに勝手だなとか思わないかな。 久しぶりに会えるという嬉しさよりも不安な気持ちが全身を駆け巡る。 師匠に会うのは三年半ぶりだろうか? 違うな。 実は一度こっそり師匠の姿を見に来た事があった。
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