勇者レベル99

2/31

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
第一話 勇者の決意  強くなりすぎた……そう思い始めてからもう随分経つ。俺達は魔王の居城の近くの森でたき火を焚きながら夜を過ごしていた。仲間のイビキを聞きながら、俺は旅に出たあの頃のことをふと思い返していた。  俺は勇者。自分ではごく平凡な一般人だと思っていた。いや、それどころかどちらかと言えば落ちこぼれの部類だった。しかし国王の側近の占い師が俺を勇者だと言ったらしく、ある日国王に呼ばれた俺は勇者として魔王討伐の旅を命じられた。いきなりそんなことを言われてもと、当然最初は断ろうとしたのだが、既に国民中に俺のことは知れ渡っていた。両親も、まさか自分の息子が勇者だったなんてと、涙を流して喜んでいた。まったく勝手な物だ。結局断れる雰囲気などではなく、なし崩し的に俺は勇者となった。  さすがに一人ではと、護衛としてつけられたのが、筋骨隆々でたくましいが頭が悪い戦士、美人だが性格が悪く金の亡者の女僧侶、よぼよぼの爺さんの魔法使いだった。正直不安だらけだったが、旅は何とか軌道に乗った。俺自身は戦いどころか喧嘩すらまともにしたことがなかったのだが、経験豊富な仲間のおかげで俺は死ぬこともなく徐々に力をつけていった。  道中、いろいろな町に立ち寄り、いろいろな人達と出会った。悪党や、魔王の手先のモンスターに苦しめられている人達もいて、俺達はその問題を次々と解決していった。 「ありがとう!勇者様!」  救った村人の何気ない一言だった。ありがとう……なんていい響きだろう。俺は今までの人生でこんな風に誰かに感謝されることなんてなかった。俺はこの時誓った。必ず魔王を倒して、世界に平和をもたらしてみせると……。 それからというもの、俺は勇者としての才能を開花させていった。自分がどんどん強くなっていくのがわかる。強敵に出会っても、仲間と力を合わせれば負けることはなかった。そして俺達は遂に魔王城へ辿り着いたのだ。しかし、魔王城の外からでもわかる、魔王の魔力の波動を感じて俺は思った。今のままでは勝てない、と。 「この辺りは強力な魔物が出る。ここらでもう少し修行しよう」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加