勇者レベル99

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 俺のこの意見に反対する者はいなかった。筋肉馬鹿の戦士は当然大賛成。女僧侶はこの辺の魔物は金をたくさん持っているからという理由で賛成。魔法使いも万全を期すに越したことはないとのことで、満場一致となった。そこから俺達の狩りは始まった。魔王城の近くというだけあって、さすがにこの辺の魔物は強い。だがその分、俺達も物凄い勢いで強くなっていった。誰もみたことのない魔法を習得したり、貯まった金で強力な装備でパーティ全員の全身を固めた。既に魔物の群れも俺達の敵ではない。俺は思った。 「勝てる…!今の俺達なら魔王にもきっと勝てる!」  恐らく8割…いや、9割方勝てるだろう。遂に俺達の手で平和を取り戻す時が来たのだ。明日…そうだ、今日ゆっくり休んで、明日魔王城に突入するぞ。今夜は久しぶりに宿屋に泊まった。野宿では疲れがとれないかもしれないから。俺は仲間を自分の部屋に呼び出した。 「ちょっとぉ、重大発表って何よ??あたしさっさとシャワー浴びて寝たいんだけど」  未だにこの女僧侶の性格は好きになれないが、苦楽をともにしてきた仲間だ。こんなことでいちいち腹を立てていられない。 「まあ聞けって。明日なんだけどさ…」  ………………?どうした?早く言えよ俺。明日魔王を倒しに行くぞって。……緊張してるのか。いや、違う。何か嫌な予感がする。何か、取り返しの付かないことになってしまう気がする。それが何なのか、その時の俺には分からなかった。 「……明日は狩りの拠点をもう少し北の方に変えよう。今の拠点付近は狩りすぎて、魔物が少なくなってきていて効率が悪いからな」 「おう、そうだな!同じ魔物ばっかり狩ってても修行にならねえしな!俺はいいと思うぜ?」 「まあ、別にいいけどぉ。お金が手に入るんならね」 「…わしも異論は無い」  結局言えなかった。まあいい、魔王なんてもういつでも倒せるんだ。それにしても扱いやすい連中で毎度助かる。戦士は単純だし、女僧侶はムカつくが自分に得があればついてくるから分かりやすい。魔法使いは俺に何か口出しすることはない。さっきは何か言いたそうだったが、まあ気にすることはないだろう。そのままその場は解散となった。
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