勇者レベル99

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 そう言って俺は寝袋に入った。明日も金集めだ、早く寝よう。しかし、この状態ももうそろそろ限界かもしれない。人々は俺達に不信感を抱き始めている。魔王城に一番近い町に着いてからもう何ヶ月も狩りを続けている。その姿を旅人や商人に何度も目撃されている。勇者達は本当に魔王と戦うつもりがあるのか?そんな声を町で何度か耳にした。このままでは、痺れを切らして別の誰かが勇者として現れないとも限らない。最悪、先を越されることもあり得る。もう、やるしかないのか………。 「お主が今何を考えているのか、何となく想像がつく。何か困った事があれば、わしに相談してくれ」 「……」  分かった…分かったよ。俺は覚悟を決めた。俺は勇者だ。勇者には勇者の役目がある。その役目を果たそう。  明日……魔王を殺る。 第二話 勇者の決戦  翌朝、俺は仲間達に魔王城に乗り込むと告げた。 「なによ?随分と急な話じゃない」 「悪いな。だが、いい加減もういいだろう。俺達はもう充分強くなった。魔王に引導を渡すときが来たんだ」 「よっしゃあ!待ってたぜこの時を!存分に暴れてやるぜぇ!」  戦士が重さ100キロはあるであろう、巨大な戦斧を片手で振り回しながら意気込んだ。やれやれ、すっかり化け物だな。まあ、こいつに限ったことではないが。魔法使いもいつも通り反対することはなさそうだ。 「いくぞ!」  俺達は真っ直ぐに魔王城を目指した。固く閉ざされた扉は戦士があっさりとぶち破った。その先に広がるのは大広間。そして、かつてない程の魔物の大軍。だが、俺を含め誰一人として怖じ気づく者はいなかった。 「ウオオオオオオオ!!」  俺達の姿を見るなり、魔物が一斉に押し寄せてきた。魔法使いが杖を横に払うと同時に大爆発が起こり、耐久力の低い魔物は一斉に塵となった。残った魔物も俺と戦士が次々と斬り捨てていく。しつこく蘇ってくるアンデッド系の魔物は女僧侶が一瞬で浄化させていった。あれだけいた魔物も、戦闘開始して10分後には全滅していた。 「がっはっは!!魔王直属の手下も大したことねえな!」 「張り合い無いわねぇ。やっぱ強くなりすぎたんじゃないの?あたしら」 「油断するなよ。まだ奥には俺達の知らない強力な魔物がいるかもしれないからな」
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