勇者レベル99

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 とは言ったものの、そんなことは微塵も思っていなかった。最初は嵐のように感じた魔王の魔力の波動も、今ではそよ風程度にしか感じない。鼻くそをほじりながら戦っても、万が一にも雑魚に負けることなどあり得なかった。  案の定、女僧侶の回復魔法もほとんど使うこともなく、俺達は魔王の間へと辿り着いた。遂に終わるのだ……長かった旅が。そう思うと、さすがに少し緊張してきた。平民の俺が、もうすぐ世界を救うのだから。 「……大丈夫か?」  魔法使いだ。思えば、俺のことを一番気遣ってくれたのはいつもこの爺さんだったな。確かに不安はある。と言ってもそれは魔王に対してではなくその後の事に対してだが。 「当たり前さ。あっさりと片付けてやるよ」  不安を払拭するかのように、魔王の間に続く扉を蹴破った。これでもう後戻りは出来ない。 「来たか……勇者共め……」  いた。魔王だ。何だか凄く小さく感じる。こんな奴に世界は恐怖に陥れられていたのか。 「魔王よ、貴様の悪行もここまでだ。今こそ貴様に正義の鉄槌を下してやる」  えーと、こんな感じでいいのか?あまり慣れない言葉は使うもんじゃないな。まあいい、サクッと終わらせるか。そして、世界の命運をかけた戦いが幕を開けた。……というには、あまりにも一方的なリンチだった。 魔王の攻撃……戦士はビクともしない。 俺の攻撃……魔王の腕がもげた。 魔王が地獄の炎を吐いた……あったかいなぁ。 魔法使いの大火炎魔法……魔王はもだえ苦しんでいる。 女僧侶は後ろで暇そうにあくびをしている。 戦士の攻撃……魔王が血反吐を吐きながら吹っ飛んだ。  弱い、弱すぎる。これまた開始数分で既に魔王は虫の息だった。 「おのれ…こんな馬鹿な。この私が人間ごときに………うぅ」 「これで終わりだ魔王。地獄で悔やみな!」  剣を魔王の脳天から一閃。真っ二つになった魔王は断末魔の叫びをあげながら蒸発した。実にあっけない。さっきまでの戦いが嘘のように静かになった。終わった………。 「勝った!勝ったぞぉぉぉ!!うおおおお!!」  戦士が感極まって号泣して抱きついてきた。正直気色悪かったが、まあ今回だけは許してやるか。 「あー終わった終わった。さっさと帰りましょ。こんな辛気くさいところにいつまでもいたくないわ」
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