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俺は誰もいない事を再度確認すると、母親の名前を呼んだ。
「ミチエ、来ないと父さんに言う」
途端、何もなかった空間に、ひとりの美女が現れた。歳の頃は二十代後半にしか見えない母親を、俺は怒鳴りつけた。
「また、なんつーことをするわけだ、ミチエは! 自分の母校を見せたかっただけとは言わないよな?」
「そうだけどぉ」
俺はがっくりとして、どっと疲れが押し寄せてきた。
「……普通の学校だったじゃねぇか。制服あるし、違うとしたら、建物がテレビでよく見るケンブリッジみたいなヤツだった。以上」
簡素にまとめて言うと、ミチエはつまらなさそうに呟いた。
「恋バナでも咲くかと思ったのに」
「咲くか! でも、ひとり名前は覚えてきたな」
「え? 誰? 誰の名前を覚えてきたの!」
「秘密」
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