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快晴の青空。
秋の学校で。
ただひとつ違うのは、ここは異世界。
魔女の学校だということ。
「……ミチエ」
魔女である母親の名前を唸りながら言い、俺はサッサと元の世界に帰ることにした。
自分をこんなところに置き去りにした、母親の意図がわからない。
魔女たちに見つかったら大騒ぎになる。自分は魔女と人間のハーフだがそれ以前に男だ。魔女たちに見つかったら面倒意外のなにものでもない。
「タクミさん」
げっ、見つかった。
しかも俺を知ってる?
「確かに俺はタクミだか、君は?」
「一度、お会いしました。あちらで」
あぁ、ミチエが俺に恋人をあてがうために、出会ったひとりか。
「覚えてくれてないんですね」
魔女である彼女は少し拗ねた顔をした。
今はあちらの学校の制服となんら変わりない服を着ているが、俺が初めて会った時は全身黒づくめのフードコートを纏っていた。
「黒いフードコートで誰が誰かわからなかった」
俺は素直に打ちあける。
と、魔女は小さな笑いをもらした。
「あれミチエ様の発案なんです。魔女に出会ったらどういう反応をするか、魔女ぽっくいこうと」
(ミチエ!)
俺の心は母親に悪態をついた。
どの面さげて会いにくるか、楽しみにしていよう。
「悪いな。覚えてなくて」
「いいえ。もう一度お会いできたので、帳消しです」
「そうか? 名前を教えてくれるか?」
「どうして?」
「名前がわからないと呼べないだろう。あんたとかになっちまう」
「……スイです」
「スイか、改めてタクミだ」
俺は自分足元に魔法陣を出現させると、スイに向かって手を振った。
「ありがとうな、スイ。騒がないでいてくれて」
大きな瞳が大きくひらかれる。
「いえ……」
「じゃ」
言って、俺は魔法陣を発動させた。
戻ってきたのは、こっちで俺が通っている学校だ。
ちょうど誰もいない理科室に出現したようだ。誰もいなかったらいいものを、誰かいたら大騒ぎになる。
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