薔薇の芽の膨らむころ

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「三好!!今日の初回打合せ、5階の打合せルーム3番に変更だから」 コピー機の前にいた私に営業マンが声をかける。 「はい!」 窓際の壁に掛けてある時計を見上げると、打ち合わせの時間はもうすぐだった。 就職課に勧められるままに短大を卒業後就職したこの会社は地元では大手企業の一つで、市内中心部からはやや北に離れた場所にある。 店舗やビル、住宅の設計施工管理まで一貫して行う建設会社。 現場を回ったり顧客や取引先と打合せたりする営業職に憧れて希望も出してみたけれど、配属は営業事務職。 誰がやってもいいような事務職はやりがいを感じる事もないけれど、それで良かったと考えるようになった。 今まで無我夢中に打ち込んだモノもないし、自慢出来るような特技も資格も持ち合わせていない。 誰かに妬まれるような事も、足の引っ張り合いも経験がない。 いつも『その他大勢』だから。 ドラマやスポーツ観戦で、感極まる事が無い訳ではないけれど、運動部特有の縦社会や根性とか努力は苦手だった。
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