夏霧に濡らされて

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中嶋くんとモリのバカな話が盛り上がり、店内に流れる有線も時々笑い声でかき消された。 今日の注文は串焼きが多い。アスパラベーコンの串にかぶりついたとき、聞き慣れた電子音に4人の視線がぶつかった。 「あ、ごめん。私かも……」 バッグを探ってスマホを取り出す。 画面に浮き出た名前は《慎ちゃん》 設計部はまだ仕事しているはずの時間に慎ちゃんからの着信は珍しい。 「電話?ここは賑やかだから外の方がいいかもよ」 紘子の一声に促されて店の外へ出た。 夏を思わせる日差しが夕焼けに変わり、頬を撫でる風を心地好くて大きく深呼吸をした。 北川くんの店は県道沿いの地元のメインストリートに面している。店の西側に伸びる細道を行けば、住宅地や懐かしい商店街へと続く。 陽も長くなり過ごしやすいこの季節になると、健康の為にとウォーキングする人が増えるのだと北川くんが教えてくれた。 そういう人も酔っぱらったお客さんも使えるようにと店の駐車場の入り口に置かれているベンチに腰を下ろした。 気付かなかったけれど、着信が2回とLINEが入っていた。 〈真亜子、大丈夫?〉 〈近ちゃんから聞いたよ〉 あぁー、それでかぁ。 既読がついた画面に納得できた。
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