夏霧に濡らされて

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「お前も、澤木もだけどさ……」 そう言いながらズボンのポケットから出したタバコを咥えてライターの火に近づけた。 ふわりと白い煙が漂う。 「俺ら大人になったんだな」 目を細めるモリの顔からは悪ガキの面影が消えていてドキっとした。 モリの右肩の向こうに上がるまん丸の月は黄色くて、何故だか今は直視出来ない。 「どうした?まさかのお眠かよ?」 何の反応もしない私に向かって前歯を見せてモリがイシシと笑う。 「違うわよ」 頬を膨らませて眉を寄せてモリを睨む。 昼間よりもぐっと低い気温のせいで風が吹くと一段と寒さを感じて、胸の前でギュッと腕を組む。 二つ並んだ影の一つが近づいてきて顔を上げると、至近距離にあるモリの手の大きさに目を見開い私に 「ここ、食ってる…」 風に揺れた私の髪の毛先をよけようと、モリの人差し指が唇ギリギリの所に触れた。 「ぅん……ありがと」 私の声をかき消すように代行の車が連なって駐車場に入ってきて、お互いに最低限の挨拶をして車に乗り込んだ。 風の匂いも胸のざわめきも、 夏はもうそこまで来ていた。
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