夏霧に濡らされて

27/28
前へ
/95ページ
次へ
次の日、昼休みの時間帯にゴールデンウィークの予定を尋ねる紘子からのLINEに返事を返す指が迷う。 化粧直しを済ませて廊下の隅でスマホに出したカレンダーと睨めっこする私は、慎ちゃん最優先の予定を考えていた。 慎ちゃんは連休の前半は仕事だけど、会えると言ってくれていて…連休の後半は大阪に行くんだと言ってたはず。 「…えぇっと、」 3日か4日ならいいかな… 紘子にLINEしようと画面をスライドさせたはずが手の中のスマホは着信音が響かせる。 着信は【モリ】 「もしもし?」 『お前、澤木に早く返事をしろよ!グズグズしてたら夏休みが来るぞ?』 暇人のくせに忙しいフリすんなよな、と呟くようなモリの暴言にカチンと来た。 「うるさいわね!今から返すところだったわよ。ゴールデンウィークすっ飛ばして夏休みとか言っちゃってんの? 馬鹿じゃない?」 会社の廊下じゃなかったら、もっともっと大きな声で反論するのに。 口元を手のひらで隠すようにして、背中を丸めた。 「私、3日か4日ならいいわよ」 『じゃあ3日にするか。マメの返事待ちだったんだよ』 悪気がなかったのか、モリはその日を開けておけと言って電話を切った。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加