103人が本棚に入れています
本棚に追加
んもうモリってば……
俯いてスマホに目を落としていた私は少し頬を膨らませていた。
「ゴールデンウィークの予定?楽しそうね」
「…あ、」
近づく人影、その声の主に信じられない気持ちだった。
「近ちゃんから聞いてるかしら?あなた、連休明けからウチの案件の一つに付いてくるんでしょ?」
課長の計らいで、忙しい夏目さんが担当するマンションのリフォーム物件のアシスタントを任されることになっている。
傍でその話を聞いていた近藤さんは「羨ましい」を連発していた。
「打ち合わせは全て私がするし、貴女に特にしてもらうことはないんだけど…」
明らかな不満を浮かべられて耐えきれずに目を伏せた。
「まぁいいわ。仕事はキチンとしてね?」
私の返事する声は音にならない。
「…ねぇその予定、相手はオトコ?」
パンツスーツの爪先が動く気配がなくて、質問されている意味も解らない。
恐る恐る目線を上げていくと、返事を待つ夏目さんの片方の眉が上がる。
「いえ、中学時代からの…友達です」
「ふーん。貴女にもいるのね、そういうのが」
仕事ができても、貴女みたいな人にはなりたくないです!……とは口に出して言えるはずもなく、言われっぱなしでその場に突っ立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!