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俺たちは柴田警部に連れられ、とある喫茶店に来ていた。どうやら被害者の女性とここで会うらしい。
おしゃれな店内に寛は落ち着かない様子だったが、俺はいつも通り黙っている。警部も時折ちらちらと腕時計を見ていたが、ふと前を向くと椅子から立ち上がった。どうやら来たらしい、俺たちも続いて立ち上がる。
そこに来た女性はごく普通の容姿で、年は20代後半ぐらいだろうか。黒いロングヘアーに服装は地味目な色合い、派手な感じはしないが控えめという感じではなく、落ち着いた感じを受ける女性だ。
警部は彼女に礼をして、椅子の方へ促す。彼女も礼を返すと椅子に座る。俺たちも座ると警部が俺たちの方を見て、
「こちらが先ほど言っていた方で、椎名秋華(しゅうか)さんだ。……秋華さん、こちらは今回の捜査に協力する刑事で、槙田久と関根寛です」
そう紹介され俺たちは黙礼する。すると彼女も礼をすると、
「槙田さんと関根さんですね。今回はわざわざ来ていただいて申し訳ありません」
「いえいえ!迷惑じゃないですよ秋華さん、むしろありがたいというか……」
「ご安心ください。我々警察が必ず事件を解決しますので」
変な事を言い出した寛に被せるように俺は言う。睨まれたが無視して黙っていると、秋華は一度キョトンとした顔をしたがすぐに口元を押さえてふふふ、と笑うと、
「ごめんなさい、何だか安心しちゃって……。今までの刑事さんとは違って親身と言うか、親切と言うか。……あ!柴田さんもとても親切ですからね!」
「大丈夫ですよ。お気になさらず」
すまなそうに言う秋華に柴田は苦笑して、気にしてないと右手を軽く振る。そんな和やかな雰囲気になったところで、警部が頼んでいたコーヒーが届き彼がそれを一口。そして警部が口を開く。
「さて、それでは秋華さん。確認も兼ねて彼らにあなたの話をしてもらっても構いませんでしょうか?」
柴田が促すと、秋華は少し戸惑った表情をする。話したくない、と言うより信じてくれるのだろうかと言う感じだろうか。
すると警部がご心配なくと言うと、
「彼らは”この手の話”には慣れていますから」
警部は俺たちを見て頷く。彼女はそれを聞いて決心したのか、分かりましたと言い、
「お話しします、私についてくる”跫”の話を」
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