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(何だ?こんな静かな公園で大声を上げる非常識な人間は。ちょっと注意して……)
振り向きながらそんな事を考えていた俺だったが、そんな思考はすぐに吹っ飛んだ。そう、そこに立っている1人の女子高生によって。
「な、何でこんな所にいるんだ……」
思わずそう漏らす俺。無理もない、そこにいたのは知人だったからだ。いや、そこまで親しくはないが。
黒みがかった緑色の髪に黒い大きな瞳、透き通った肌に赤い唇、整ったルックスとスタイルからは高校生とは思えない。しかし着ているのは名門とされるお嬢様学校、聖麗(せいれい)女学院のベージュとグレーを基調とした制服だ。
「あれ、あんたって探偵見習いじゃなかったっけ?それともあれは……」
「あれは諸事情でな。それより何でここにお前がいるんだ」
「お前は失礼ね。私には加納由紀って名前があるのよ、久」
そうだ、加納由紀。この前偶然出会った探偵志望のスリリング大好きガールだ。しかも俺の名前を呼び捨てにするとは、良い所の娘とは思えない。
「ん?槙田、その子知り合いか?」
寛が俺に聞いてくる。秋華も同じような疑問を抱いたらしく、頷いている。
やれやれ、どう説明したものか。俺は大きなため息をついた。
俺は由紀に寛と秋華の紹介と本当は刑事であること、また由紀の紹介と出会った経緯を話した。
「なるほどねえ、まさかお前に知り合いに女子高生の、それも良いとこのお嬢さんがいたとはなあ……。くそっ、うらやましい!」
「この寛があんたの同僚なのね。ふーん……、何か馬鹿っぽい?」
「何だと!?おい嬢ちゃん、もう少し目上に対する態度を……」
「そんなの、知らないねー」「話を聞け!」
馬鹿にする由紀と馬鹿にされる寛を見て秋華が苦笑しながら、
「すごい賑やかですね……、警察の方も思ったよりフレンドリーなんですね」
「あれは特殊です。それにあの女子高生も普通じゃないです」
そう言って俺は黒猫の顎を撫でる。ゴロゴロと気持ちよさそうにする猫に自然と頬を緩ませる俺。すると、
「まったく、お前たち捜査はいったいどうなってるんだ?」
俺が後ろを振り向くと、そこに呆れ顔の柴田警部が立っている。どうやら俺たちの捜査の進捗具合を確認しに来たみたいだ。
警部はさらに俺の後ろで騒いでいる2人を見て、さらに顔をしかませた。
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