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今回の内容は、いわゆる感動系のものだ。
ヒューマンドラマ的なものを萌え絵にのせて発信し、露骨なお涙頂戴的な音楽がのせられるという演出がなされる。
当然登場するキャラも叫ぶ、泣く。
そりゃもうぼろぼろ泣く。
うんざりだった。
こんな、いかにも商業的なものを狙ったものに加担するのがもう、耐えられなかった。
今日が声入れの初日だ。
あと30分もすればマネージャーさんが呼びにくるだろう。
私は一人、控え室の机の上で指を組んでじっ、と目を瞑っていた。
この時間はマネージャーさんにも席を外してもらっている。
それなりに大物になった私には、控え室は個室を割り当てられている。
声入れの前は、一人になりたかった。
誰とも顔を合わせず、ただお芝居に集中したかった。
そうでもしなければ、とても役を演じることなんて出来そうになかった。
控えめなノックの音が聞こえた。
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