3人が本棚に入れています
本棚に追加
瞼を開き、顔を上げる。
珍しいことだった。
この声入れ前の集中。業界の中でも有名になっているので、邪魔する人なんていなかったから。
ネットでも『控え姫』なんてありがたくない名前までちょうだいしちゃってるし。
組んだ指を開き、私は扉に向かった。
なんだろう?
少しだけ、心が揺れる。
何か大事な話とかだろうか?
いい加減わたしのこの傲慢な態度に、事務所の方がくびきりしたくなったとか?
……まぁ、ありえないか。
私がやってるワガママなんて、せいぜい声入れ前に控え室で一人にさせてもらうことくらい。
それ以外はよく言う事を聞く優等生で通ってる。
それに、たとえそれでも辞職する手間が省けるってものだ。
なら、身内の大事?
恋人――はいないから、家族とかに事故とか病気とかが起こった?
そっちなら……ありうるなあ。
最初のコメントを投稿しよう!