声優

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 その脚本を見せられた時、正直、これが出演作品の最後にしようと思っていた。  私自身、もう、声優としての自分に限界を感じていた。  声優という仕事は、とても複雑だと思う。  ただ仕事を、声優として役を演じていればいいというものじゃない。  それだけじゃとてもやっていけないのだ。  30分作品の最低ランクは1万5千円、最高でも4万5千円。  これが声優界の現状だ。しかも諸経費も引かれるので、最初なんか1万円切った。  これでどうやって暮らしていけというのか?  新人の頃は、必死にコンビニでアルバイトしながら生活を成り立たせた。  本当はもっと割りのいいバイトをしたかったけど、しょうがない。  いつ仕事が入ってくるかわからない状況では、時間に融通が利くコンビニくらいしか選べなかったのだから。  すごくきつかった。  朝の7時までバイトで、家に帰るのは8時過ぎ。  そのまま気絶するようにばたんキュー。
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