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カナコは信じられなかった。
男の話もそうだが、それ以上に自分が唱念師(とねし)だということを。
『師(とねし)』という姓は珍しいなとは思っていた。
小さい頃に親に由来を尋ねたこともあったが、詳しくは知らない様子だったのを記憶している。
男は力を試してみるよう言ってくる。
だが、年頃の女の子。
その男以外誰もいないとはいえ、ここは近所の公園。
そんな中で大きな声を出すのは恥ずかしい。
しかし、急がねばならない。
話が事実であれば、少年の命が危ない。
カナコは男に後ろを向いてもらうと、思い切って念を唱えた。
その瞬間、目の前に鳩が現れ、空高く飛び上がった。
「うわっ、ホントに出た・・・」
カナコは驚くと身を後ろにそらせた。
(ふふ、やるな・・・)
男は思わず笑みをこぼした。
カナコはコジローとじゃれ合いながら嬉しそうにしていた。
この力には大きな代償が必要なことを知らずに。
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