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昨日も夫は酔って暴れた。
(何が気に入らないんだか、会社で嫌な事が有っても私に当たるんだから…ったく、仕事を家庭に持ち込まないでよね)
(大声で喚き散らして、物を投げつけるし、テーブルの上はひっくり返すし…若葉は2階に居たけど、精神衛生上良くないわよね)
こんな家庭で、よくもまあ、あんなに素直に育ってくれたもんだ。
と双葉は思った。
(女の子は、良く「大人になったらお父さんみたいな人と結婚したい」なんて言うらしいけど…)
「やめて」
(あんなのと結婚したいだなんて、思ってないわよ)
若葉だけには幸せになってほしい。
父親のような、あんな男に似た男だけは選ばないでほしいと思った。
(まだ彼氏は居ないみたいだけどね)
(出来たら、黙ってたって私にはわかるわよ)
(母親だもの)
「さーて、今日は、久し振りに三津谷君の店で友美と呑むのよ」
【居酒屋】
「今日は、呑むわよー」
「いらっしゃい。あれ?双葉…何かちょっと感じが変わったな」
「そう?」
(どう変わったのよ?)
髪を切って、化粧品を買い換えて、服も買って、コラーゲンだって買い込んだんだから、少しぐらいは変わってくれないとねえ、と思った。
(そう、コラーゲン)
(効果出てるかな?)
「何かこう…女っぽくなったって言うか…」
(女っぽく?)
「何よそれ….それじゃ、今まで女じゃなかったみたいじゃない」
「悪りい、悪りい、そういう意味じゃなくて…」
「どういう意味よ」
(そりゃ、子供が出来てからは、女は捨てて母親に徹してたわよ)
それで気がつけば15年。
すっかりオバサンになってしまった。
そう思った。
(でも、自分の事オバサンて言わない方が良いって書いて有ったな…)
「何かさ、若くなったな、お前。うん、綺麗になったよ」
「え?やだ何言ってるのよ」
(コラーゲンの効果かしら?セールストークよね、そうに決まってる)
そうは思っても、嬉しかった。
(まあ、三津谷君に言われてもね…こーーーんなに、小っちゃい時から友達なんだから)
彼を男として意識した事が無かった。
今でも幼い頃と同じ気持ちだった。
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