第1章 タロット

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【居酒屋】 「そんなに気になる?もしかしたら、そのタロットの運命的な出会いの相手とか思っちゃってない?」 「まさか!そんなんじゃないわよ」 (あんな若い子が運命の相手だなんて…) 「だって、さっきからその子の話しばっかしてるじゃない」 「何かね、馴れ馴れしい子だったのよ。でも、何であんな事初対面の子に話しちゃったんだろ?私」 「ストレス溜まってたんじゃない?」 「初めて会った気がしなかったのよね、昔から知ってる子みたいだった。何か懐かしい感じがしたのよ」 (何で懐かしいんだろう?不思議…) 「おう、いらっしゃい」奥からオーナーが出て来て言った。 「双葉。今日は呑んでて良いのかよ?」 彼は、2人の同級生の三津谷。 「主人は出張だし、娘はお婆ちゃんの家に行ってるから良いのよ」 「こんな時じゃなきゃ、呑みに来れないもんね、双葉は」 「友美は良いわよね、自由で」 「うちのも今頃どっかで呑んでるからね」 友美は結婚が早かったので、子供は成人して家を出ていて、夫と2人で暮らしている。 (夫の前にも何人か恋人は居たのに、何であんなのと一緒になっちゃったんだろ?でもまあ、今は娘が居るからね) (娘さえ居れば私は幸せなのよ。今更恋愛なんてね…私に限って無い無い) この時まだ双葉はそう思っていた。 それでもふと気がつくと彼の事を思い出す毎日。 (犬の散歩をしてたんだから、あの近くに住んでるのよね) それからちょくちょくあのスーパーに買い物に行くようになった。 あの路地を歩くとドキドキした。 犬を見かけると、マックスではないかと思ってドキドキ。 (何やってるんだろう?私…) テレビでソウルメイトに関する番組を見た。 「ソウルメイトね…」 (彼は私のソウルメイト?何でこんなに気になるのよ?1回会っただけじゃない) (ソウルメイトならあれで終わりじゃないでしょう。だいたい魂なんて本当に有るの?) ソウルメイトの事をネットで調べたりした。 (ふーん、そういう相手が居るんだ…そりゃそういう人と結婚出来れば良いだろうけどね…) (皆んなが皆んなそういう人と結婚してるわけじゃないのよ。妥協して結婚するのが殆どでしょう。私なんか、わけがわからないうちに結婚させられてさ…それで15年よ)
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