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俺はサッカーも野球も運動は泥だらけでやった。それは小さい頃からだ。家の中で遊ぶよりも、真夏でも真冬でも遊ぶといえば外だった。記憶の中のその場所には、ひろきはいない。
ひろきは運動は見るのが専門。もしくは女の子達と部屋の中で遊んでいた。絵を書いたり本を読んだり、女子とはマンガを見て楽しそうだった。違和感もなかった。俺だってマンガは見たけど、目がキラキラしたマンガなんて気持ち悪くて読めなかった。
しかしながらあの頃は、それに文句をつけたこともないし、疑問にも思わなかった。どうだってよかった。本人が楽しいならいいのだから。
あの日はなぜだろう。
なんだったのだろう、6年生というお兄さん的響きがそうさせたのだろうか?
子供のほんの悪戯心だったのだろうか?
「登ってこいよ!!ひろき!!」
木の根っこから木に縋って、上にいる俺を心配そうに仰ぎ見るひろきにそう声を掛けた。
「む、無理だよ。しょうちゃん……」
今にも泣きそうな声で、うつむいてしまった。
まだ僅かに落ちずに残った黄色い葉っぱが俺の視界にひろきをチラチラと映したり消したりする。
じれったくて、降りていってひろきを俺がいたところの半分まで、無理矢理引き摺りあげた。
小高い場所の、木造の古い校舎。それが俺達の学校だった。
校庭とは反対側のこの木のある学校の裏庭は町が一望できて、小さい山も見える。この景色が俺は好きだった
しっかり華奢なひろきを抱えて、ひろきにはしっかり木を抱えさせた。
「見てみろよ!夕日沈むぞ!!きれいだろ?!」
びくびくしながら、ひろきが顔を上げてその顔がきれいなオレンジに染まる。睫毛の影が頬に落ちている。
自分の喉がコクリと言ったのがわかった。
――――なんだろう、へんなかんじ――――
嬉しそうにひろきが笑って俺の手を掴んではしゃいだように叫ぶ。
「しょうちゃん!きれいだね!!ありがとう、しょうちゃん!しょうちゃんが連れてきてくれなかったら見れなかったね」
意地悪のつもりで引っ張り上げたのに、俺に向かって微笑んだ顔は、テレビで見た天使みたいだと思った。
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