プロローグ

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このアパート自体は、俗にいう“訳あり”でこそなかったものの、土地柄的にかなりお安かったのだ。 が、しかしながら、それも、自分で“訳あり”にしてしまった今、今後、もっと家賃が下がるのかと思うと、なぜか、最後の最期まで他人に迷惑をかけた後悔よりも、むしろ、損をした気分になるのは、やはり、生きている時からすでに俺が腐り切っていた証拠だろう。 そして、それがなに、今じゃ幽体離脱し、まさに腐っていく自分を、すでに腐った俺が見下ろしながら、今までのくそしょうもない人生を嘆いている最中ってわけだからお笑いだ。 だからといって、生きている間に何か変えられただろうか。 金ブラ、賃ブラ、貧乏ダラダラ。低学歴、低容姿、低収入。 絵に描いたようような負け組人生。孤独死、無縁仏上等ってな感じだ。実際、それも現実のものとなっちまった今じゃ、もう救いようはない。 居場所なんぞ何処にもない。若い時分は世間の所為にも出来たが、この歳だ。もう生きるのも死ぬのも面倒になっていた感が否めない今、死んで良かったのかもしれないが。 ま、実にそんな俺だ、当然、結婚なんてもんはおろか、彼女もいない。 独身で身寄りもなく、あまつさえ友人すらもいない俺は、正真正銘、腐り切った今でも、こうやって自分の出す腐敗臭で、自らの居場所を示すしかないというわけで。
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