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その名は
もう冷たく感じる風が、色づいた公園の落ち葉を 乾いた音をたてて舞い上がらせてた。
それに じゃれるように走りだした犬に、驚いた鳩が一斉に飛び立つ中、リードを引っ張りながら飼い主の少女が愛犬に叫んだんだ。
「こらっ!寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の、水行末 雲来末 風来末、食う寝る処に住む処、やぶら小路の藪柑子、パイポパイポ パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの、長久命の長助たらっ! 待って!」
(な、なぜ?!犬にその名を?!)
そう思って俺は思い切って話しかけたんだ。
「あの…貴女“も”落語が 好きなんですか? もし宜しければ、今度一緒に寄席に行きませんか?」
***
「…と、これが、パパとママとの出会いだよ」
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