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近代日本文学が整然と並んだその『松原文庫』。
名前の由来は、あの老画家――松原彰造(まつばらしょうぞう)。
つまり、『松原文庫』は松原彰造が寄贈した図書のことで、それを松原一弥が背後にしている。
その名字の一致は偶然のことではない。
松原一弥は松原彰造の孫であり、この図書館にいるのはその縁あってのこと。
そして私の前にいるのも、その縁ゆえのこと。
ただし、後者の縁にかぎって言えば、それは決して良い縁ではない。
こっちが、顔に容易に表れてくれない愛想の代わりにせめて言葉だけでもと思って「こんにちは」と挨拶をしたのに、「愛想がないのな」と返してきたことからもそれは言えようというもの。
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