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でも、どうにか老桜は花を咲かせた。
老画家が見つめる枝には、その花の姿があった。
ただ、少し強い風が吹けば枝を離れて宙を舞う――老画家が見つめるのは、そういう終わりの頃を迎えた花。
ひらひらと舞い落ちる、ほのかに紅に色づいた花弁。
その幾つかをその身に受けながら、老画家はなお枝を見つめる。
いつのまにか足を止め、私はそうする老画家を見つめ、すると不意に、老画家がこちらを見てきた。
それからひと月ほどが経った頃。
私は老画家と再会した。
再会の場は、放課後の学校の図書室。
老画家は50年以上前の卒業生で、図書室を訪れたのは、少し前に寄贈した図書を見るため。
片や私は、図書委員の代表として、やって来た老画家を迎えた。
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