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老画家の訃報を聞いたのは、その日から数か月後の夏が終わりに近づいた日のことだった。
*
自覚していることでも、他人に言われれば腹が立つ。
そういうものはだれにでもあると思う。
私にとって、それは例えばこういう言葉。
「相変わらず愛想ないのな」
そう言ってきたのは、見た目だけはなかなかによろしいスーツ姿の男性。
場所は学校の図書室、時刻はそろそろ6時。
その時間に学校の図書室にいるスーツ姿の成人男性となれば、その男性は先生、ではない。
男性は来校者。その証拠に、『来校者③』と書かれたプレートを首から下げている。
それだけで、名前はどこにも見当たらない。
でもすでに、私は名前を知っていた。
松原一弥(まつばらいちや)。
それが男性の名前で、その背後に見える本棚には、『松原文庫』との標示が見える。
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