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「伸二、お前は何か勘違いしていないか?」
「お前は自分の持ち味はなんだと思っている?俺はサッカーの名門中学に推薦してやったし、その後も名門の高校に入ってレギュラーを勝ち取れたのはどうしてだと思うんだ?」
伸二は、コーチの突然の厳しい口調に戸惑いながらも、自分のプレーを振り返って、自分の持ち味は何かを考えたが、答えは一つしか出てこなかった。
「僕の持ち味は・・・やっぱり得点力です」
それを聞いた二浦コーチは、さらに口調を荒げた。
「己惚れるな伸二!お前のように得点できる選手は、プロにもなればざらにいるんだ!」
「俺がお前を推薦したいと思ったのは、サッカーを一番楽しんでいたからだ。こいつは誰よりもサッカーが好きなんだと思ったからだよ!」
二浦コーチの言葉は、伸二の心に衝撃を与えた。
伸二は今まで自分の得点力がチームを支えていると思っていたし、点を取るのが当たり前になっていた。
それが何時しか重荷になり、点を取ることが義務になっていたことをこの時初めて気付いたのだ。
「コーチ、確かに己惚れていました。もう一度一からやり直します」
「明日、小学生と一緒にサッカーしてもいいですか?」
伸二の言葉に、ようやく昔のように優しい口調に戻った二浦コーチは冗談交じりで言った。
「今からでもいいんだぞー」
「ありがとうございます!」
伸二が抱えている問題は根本的に解決したわけではなかったが、この日二浦コーチと出会ったことで、あの秋の試合以来初めて少しだけ前を向けたような気がした。
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