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セレクションの話をもらった翌日の放課後、伸二は受験を決心したことを鬼軍曹に伝えた。
「先生、俺、セレクション受けます!」
昨日までとは違い、顔つきも、口調も引き締まった伸二を見た鬼軍曹は、おのずと自分自身の気持ちも引き締めて、セレクションの説明をし始めた。
「お前ならそう言うと思ってな、もう登録だけはしてある。なにしろ締め切りは昨日だからな」
選手権の県予選以降、伸二が試合の事でくよくよ悩んでいる間にも、当然時間は進んでいた。今回の件に関してもあまり時間がなかったのだ。鬼軍曹は伸二の状態を考えて、気持ちの落ち着くぎりぎりのタイミングまで待ってくれていたのだ。
セレクションの内容は以下のようなものだった。
〇日程:3月10日
〇内容:午前1試合、午後1試合のテストマッチ
〇合格者:1名を目安とする(該当者なしの場合もあり)
〇場所:東京都〇〇競技場
ドイツからは、スカウトが来日し、通訳を通して会話ができるため、言葉の心配はなさそうだった。近年の日本人選手の活躍により、今年から、日本でのセレクションが開かれることになり、言葉の問題や、移動、時差ボケを気にすることもなくサッカーに集中でるよう配慮がされていた。
「今日は2月3日だから約1か月後ということになる。時間は無いが精一杯準備しなさい。」
鬼軍曹の緊張感ある口調と、夢にまで見たボルトムントのセレクションを受けることができるという興奮や、厳しい審査を控えた緊張とが相まって、説明を受けている間中、伸二は震えが止まらなかった。
説明を聞くことで、いよいよ現実味を帯びてきたセレクションに向け、伸二は一層決心を固めた。
(「一日一日が勝負、万全の準備をしなくちゃいけない!」)
「先生ありがとうございます、俺頑張ります!」
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