第3章 伸二の決意

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セレクション合格に向け、伸二は課題をいくつか挙げてそれを期日までに完成させていく形で練習をすすめることにした。 最初の大きな課題は、”体力”を取り戻すことだった。 大会以降希望を失っていた伸二は、約3か月のもの間、日課にしていた毎朝のランニングを怠っていた。 サッカーではフル出場すると約10キロ走ると言われていて、これに合わせて10キロのランニングを日課にしていたのだ。  スポーツ選手にとって、3か月のブランクは意外に大きい。 そのためにこれから毎日、普段の倍の20キロを走ることにした。 次にあげられる課題は、”試合勘”を取り戻すことだった。 これはほとんど感覚的な物で、これに関しては、試合形式を繰り返すしかなかった。 伸二はサッカーを初めて1週間とボールを触らなかった日は無かったが、こちらも3か月まともにボールを触っておらず、不安は大きかった。 本来なら、チームメイトに頼んで試合形式で練習させてもらえばいいのだが、未だ自分を責めたチームメイトを恨む気持ちと、今更頼めないという気持ちから、伸二は選手権予選敗退以来チームメイトとまともに話をしていない。 そういう事情もあり、伸二はしかたなく実力では所属している高校に数段劣るものの、強豪校のOBなどが所属し、センスや感覚ではいいものを持っている地元のサッカーチームで一緒に毎日練習させてもらうことにした。 最後の大きな課題が例の”シュートが打てない”トラウマの克服だった。 これに関しては伸二はどうしても明確な練習方法が思いつかなかった。 考えていても仕方がないので、とりあえず地元のサッカーチームの試合形式で行う練習の中で、シュートを打ちまくることにした。 課題は3つ ①体力を取り戻す ②試合勘を取り戻す ③シュートを打つ 「よし、やるぞ!」 具体的に取り組む内容を決めた伸二は、「後はもう目標に向かって突き進むだけ」という気持ちになっていたし、今までも同じようにいろんな課題を克服して成長してきた経験があったため、課題の克服に疑いはなかった。 ようやく希望が出てきた伸二だったが、この後、ある課題の克服にこれほど苦労することになるとは、この時はまだ思わなかったのだった。
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