第1章 伸二の後悔

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「最後の場面はシュートだろー!」 「なんで打たねーんだよ!ゴール狙えよ!」 常に相棒としてパスを供給し続けてくれたミッドフィルダー(MF)の豊田啓介は、伸二に食ってかかった。 高校生活最後の試合後のロッカールーム、本来ならプレーをたたえ合い、抱き合って涙を流す場面だったが、”点取り屋”であるセンターフォワード(CF)のポジションを任された伸二のあまりに不甲斐ないプレーに、チームメイトからは叱責の声があふれた。 啓介が食ってかかるのにも理由があった。 伸二は常にエースとしてここまでチームを引っ張て来たが、この大会に入って調子が上がらず、獲得した点数は0点だった。 しかしそれだけで啓介たちが怒っている訳ではなかった。 点を取るのが仕事のCFのポジションを任されながら、点につながるシュートをほとんど打てないでいたからだ。 試合が終わるたびに、何度も「シュートを打とう」と監督や仲間から励まされてきたが、そのたびに期待を裏切り、今日、最後の試合になってしまったのだ。 「マジですまん、俺なんてサッカーやる資格無いよな」 伸二は自分に絶望し、ほとんどチームメイトと会話をすることもなく、グランドを後にした。
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