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校舎から出た伸二は、ジェットコースターのような心境の変化にひどく疲れた様子で、すぐに自分の進路について考えることができなかった。
何かを考えるともなく、うつむいたまま帰り道を歩いていた伸二だったが、ふと気が付くと、小学校の頃に所属していたジュニアチームが練習をしていた、川沿いのグランドに行きついていた。
グランドではボールの扱いもままならない小学生たちが、それでもとても楽しそうにボールを追いかけている。
(「あの頃は何の心配も無かったよな、本当にサッカーが楽しくてしょうがなかった」)
伸二は小さい頃の自分がうらやましかった。純粋にサッカーがうまくなりたかったし、そのためにただサッカーに夢中になれたあの頃が、なんだかとても遠い昔のように思えた。
本来なら、こんなチャンスを逃す手は無いし、すぐにでも返事をするべきだった。しかし伸二はどうしても自分がレベルの高いドイツでやれる気がしなかった。それほど伸二にとって、シュートが打てないトラウマは大きかったのだ。
結論が出ないまま伸二は現実を逃避するように、ぼんやりとグランドを眺めていると、なんとなく懐かしい声が聞こえたような気がした。
「・・・んじ、・・・おい伸二じゃないか、どうしたんだ?」
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