第2章 伸二の夢

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声のする方へ向いてみると、声の主は、伸二の小学校時代にジュニアチームのコーチをしてくれた二浦コーチだった。 二浦コーチは高校の鬼軍曹とは違い、とても優しい人物で、この人のおかげで何も心配することなく、楽しくサッカーに打ち込めたといっても良かった。 「あ、どうも、お久しぶりです」 伸二はすぐに現実に戻れない様子でなんとか挨拶だけはした。 「なんだなんだ、元気印の伸二が何を黄昏ているんだ?」 二浦コーチは伸二の様子を見て、なんとなく深刻な様子を感じたが、あえてそんなそぶりは見せず、小学生の頃の伸二と接するような口調で言った。 「実は・・・ボルトムントからセレクションを受けないかって誘いがあったんですが・・・・」 伸二としては相談しにくい事だったが、久しぶりに会ったにもかかわらず、なぜか二浦コーチには自然と相談することができた。 「シュートが打てないんです」 「選手権大会見ていたよ、確かに調子は悪そうだったな」 どうやら二浦コーチは卒業して何年も経つ伸二の事を、気にかけていてくれたようだった。 「でもセレクション、受けるんだろ?」 二浦コーチは、伸二がセレクションを受けるかどうか迷っていることを承知で、伸二の悩みを引き出すように問いかけた。 「うまくやれる自信がないんです」 伸二は今の心境を正直に伝えた。 すると二浦コーチは、今まで聞いたことのない厳しい口調で話し始めた。
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