第1章

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 特徴こそないがそれなりに平穏な日常が送れているのはこの学校の良いところである。  そんな事を考えながら図書室の窓に日が差すのでそれに体を寄せてみた。  今の退屈な日常は神様から俺への御告げの様だった。  家がある。兄妹(きょうだい)がいる。親がいる。友人がいる。先輩がいる。町には知り合いがたくさんいる。あまり目立った特徴のない俺にはそれが唯一の取り柄だった。  光の差す窓からは何時も何かの気配を感じていた。  神、天使、悪魔、得たいの知れない何かがそこには常に存在していて、それが窓の外から光を透して誰かに見られているように感じるのだ。  俺はそれがすごく心地好かったのだ。  ずっとこんなふうに暖かい日の光にあたり続けていたいと、俺は思った。  そんな事をしてると、図書室のドアが開いて中から誰かが入ってきた。  扉から離れた窓際にいる俺はそれが誰だかは分からないが歩幅や歩く音で多分男性だと分かった。  周りの部員がワラワラと動きだすのが分かる。  すると、真帆驢馬がさっき持っていった本一式を返却しに戻ってきた。  随分読むにしては早い返却だと感じて、俺は真帆驢馬に訊ねる。 「もう読んだのか?調べるにしては早いな」
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