第1章

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 そして、化け物が捕まれた腕と別の腕を中国人に向かって降り下ろした時、中国人ゼンシュの身体に異変が起きた。  化け物の身体に対してゼンシュの腕はまるでその腕を拒絶するかのように捻れ、関節は外れ、そのままゼンシュはその激痛に倒れた。  化け物はゼンシュに触れてはいない。  ゼンシュ自身がとった行動とも思えない。  あの化け物は一体何をゼンシュにしたのかが俺には検討もつかない。  いや、何が起きたかも実際この時分からなかったのだ。  ゼンシュの次の言葉が俺を次の行動へと移させた。 「あの化け物には指一本近付くな!奴らの前で人間の感覚は通用しない!時間を食われたくなかったら今すぐ此処から逃げろ!」  そう言ったゼンシュはそのまま捻れた腕を痛々しくジーンズの服ごとゴキリと正常な位置に戻すと、中シャツのポケットから何かの薬が入った瓶を取り出しふたを開けてソレを一気に飲み干した。 「時限薬無限湯(じげんやくむげんとう)」  飲んだ瞬間ゼンシュの身体の筋肉が一気に膨張し身体中に青筋が浮かび上がる。  掛けていたサングラスを外してその眼光が晒されると、猛禽類のように鋭い目付きと身体中に浮き出た筋肉の筋がその顔から写し出されていた。
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