3人が本棚に入れています
本棚に追加
まさに別の怪物、いや鬼とでも言うレベルの変貌だった。
俺は、ただそれを見てるだけしか出来なかった。
「さぁ、ノーデンスさんよぉ、バラバラになる覚悟出来てんだろうな!」
そう言った瞬間、俺はゼンシュを見失った。
ただ見えないだけではなく、それに対して常に立ち尽くしている後輩たちの背中から産まれた化け物達が皆、次々に図書室の本棚に向かって吹き飛んでいく。
原理などは考えてる暇もなく、次々に化け物の身体は地面から離れては地に落ちることを繰り返す。
ゼンシュの姿が目に写った時には、周りの化け物はそこかしこに倒れて動かなかった。
それが、ゼンシュの拳によるものであると確信したのはその時だった。
ゼンシュの姿は、残像のごとくその空間に幾重にも見えたのだ。
万華鏡のように、映りこむ残像の拳が化け物の方向に向いていたのを俺は覚えている。
次の瞬間、ゼンシュは俺に言った。
「さて、次はお前かこぞう。既に時間のズレが出ているはずだ。
もう時間はない。
ここで俺に人として殺されるか、それとも他の生徒達のように化け物になって死ぬか。
好きに選べ」
何故、俺にそんな事を言っているのか分からなかった。
しかし、多分俺には分からないことがゼンシュには分かっていたのだ。
それが、例え何であったとしても今の現実は変わらない。
後輩が化け物になったのだ。
もう俺にとってこの世界は日常じゃなかった。
苦しい。
怖い。
今すぐ此処から離れたい。
でも、それとは裏腹に俺の足は動かなかった。
まるで石のように足が固まったようだった。
次第に、身体も足と同様に固く動かなくなってきていた。
俺は、何となく悟った。
――あぁ、俺、あいつら(後輩たち)と同じになるんだ。
と……。
グサリ……
重々しく、俺の身体だけが自分の意識から離れた気がした。
気付くとソコには何も見えずただ意識が遠退いていく。
「……いにやった……」
誰かの声が意識が消える前に聞こえた気がした。
++++++++
最初のコメントを投稿しよう!