第1章

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「キリーツ、レイ、ちゃくせーき」  今日も、人間の子供のけたたましい発声に僕は付き合っていた。  悪魔として日本に滞在して十年と三ヶ月、この中学校にももう五年教師として在籍している。  現代の技術力を学び、魔界を高度経済成長させるのが僕の夢だ。  しかし、現状、僕は学校の先生だった。  別にいやとかではない。ただ、人生を脱線した事には気付いている。  悪魔と言うのは、言ってしまえばちょっと人間より丈夫で魔力があって魔法やら魔術等と呼ばれる特殊能力があるだけの只の凡人である。  俺は、そんなその他大勢から孤立し、魔界を変えるべくして2015年の現代にやって来ていた。 「ホームルームは以上、お疲れ様でした」  ホームルームが終わり、教室を出ようとした僕に一人の生徒が近付いてきた。 「せんせーい、今日の正門前の火柱事件って知ってますか?」 「何の話でしょう、街灯でも壊れたのではないでしょうか?」 「あれ、今学校中で話題になってんだよ。先生も見てたかなぁーっと思って聞いてみたけど。まっ、知らないならいいや」  そう言って、生徒は僕の前から姿をくらました。今日は色々と面倒な日だとその時思った。 「魔法なんてこの世から滅べば良い」  そんな事を思わず愚痴るほどだった。
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