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「麗花さんと父は、親同士が決めた許嫁だったそうです。麗花さんが二十歳になったら結婚させるつもりだったらしく、麗花さんもそのつもりだったと言ってました。父が北国を離れてからも、麗花さんは花嫁修行をしながらお嫁さんになる日を夢見ていた…。だけど父は麗花さんと結婚するつもりなんてなかった……」
話すと覚悟を決めたはずだったけど……。
いざとなると、躊躇する。
だって、私の存在そのものを否定されてしまったんだもの……。
私なんか、生まれない方が良かったの…?
そしたら、麗花さんを不幸にすることはなかった?
「まひろ、大丈夫か?」
主任が私の手に触れ、大きな手で包み込んでくれる。
温かい…。
冷えかけてきた心まで温かくしてくれるよう。
深呼吸して、更に心を落ち着けた。
「北国を離れた父に不安を感じていたのか、麗花さんのお父さんは麗花さんが16歳になったら……」
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